手仕事カレンダー
Vol.8 モロッコの伝統調味料
「塩レモン」をもっと使いやすく。
国産レモンで作る、
こてらみやさんの
「レモンの塩コンフィ&ペースト」
2024/01/05
手仕事カレンダー
2024/01/05
最近、国産レモンを店頭で見かけることが増えてきました。防カビ剤不使用、無農薬(または低農薬)、ノーワックスの国産のものは、実や果汁だけでなく皮も使えるのが魅力。旬を迎える冬の時期こそ、レモンの保存食品を仕込むチャンスです。
今回、国産レモンで作る料理とお菓子のレシピの著書がある、フードコーディネーターのこてらみやさんがすすめてくれたのが、「塩レモン」よりも活用しやすい「レモンの塩コンフィ」とその進化形「レモンの塩コンフィペースト」。ライフワークとして作る保存食のこと、寒い時期には欠かせないという粕汁のことも聞きました。
レモンを塩漬けにして熟成させる、モロッコの伝統調味料「塩レモン」。まろやかな塩けと酸味、さわやかな香り、熟成させることで生まれる旨味が加わり、料理をおいしくまとめてくれます。日本でも知られる存在ですが、「いまいち使いこなせない」という声も。こてらさんもその一人でした。
「現地流にくし形切りにして仕込むと、タジン料理(タジン鍋を使った蒸し煮)以外には使い勝手が悪くて。あるとき、薄い輪切りにして仕込んだら、煮込みにするとレモンの皮までもろもろに崩れて、全体になじんでおいしかったのです」
こてらさん流の「レモンの塩コンフィ」は、さらに進化。「熟成させた後にペースト状にしたら、料理の幅がぐっと広がりました。肉魚の下味や炒め物、ドレッシング、ソースの味つけに使ったり、少量を料理に添えたり。今では、なくてはならない調味料です」
自宅の広いベランダガーデンで、マイヤーレモンとリスボンレモンの木に多く実がなるようになって、レモンの保存食や調味料を作るようになったそう。
「マイヤーレモンは酸味が穏やか。リスボンレモンは酸味と香りがしっかりしていて、品種によっても仕上がりが違います。また、完熟したレモンで作ると、味がよりまろやかになって、おすすめ。1〜2月ぐらいに出回るものが狙い目です」
熟成の仕方や期間によっても、味わいは大きく変わります。
「2週間ほど常温におき、あとは冷蔵室に保存してゆっくりと熟成させます。熟成が進むと果汁がとろっとしてきて、半年ぐらい経つとレモンの皮が簡単に崩れて料理に使いやすくなりますよ(記事先頭の写真右参照。中央は仕込んですぐのもの)。若いとフレッシュ感が強く、1年ほど経つとコクが出ますが、味のクセも出るので、半年ぐらいが私は好きですね。いろいろ試してみると楽しいですよ」
1.レモンは洗って水けをふきとり、両端を切り落として、皮つきのまま5㎜厚さの輪切りにし、竹串などで種をとる。重さを量り、分量の塩を用意する。
2.大きなボウルに①を入れ、レモンに塩をまんべんなくまぶす。
3.清潔な容器に②をすべて入れて詰め、上からぎゅっとレモンを押し込み、果汁に浸かるように沈める。レモンが果汁に浸からなければ、レモンのしぼり汁をかぶるくらいに加え(スケールに乗せて計量する)、しぼり汁重量の40%の塩を足す。
4.ラップで落としぶたをしてから、容器のふたをする。日の当たらない涼しい場所に2週間ほどおき、その後は冷蔵室で保存し、好みの具合に熟成させる。冷蔵なら1年ほど保存可能。
熟成した「レモンの塩コンフィ」を、ハンドブレンダーやフードプロセッサーなどで攪拌し、ペースト状に。清潔な瓶などに入れて冷蔵室で保存すると、いろいろな料理に活用できます。
今回教えてもらったのが、「たらのレモンソテー」と付け合わせにぴったりの「ほうれんそうのレモンソテー」。どちらも味の決め手は「レモンの塩コンフィペースト」
「簡単に味が決まるのに、レモンの香りやまろやかな酸味が加わって、洗練された味わいになります。たらもほんのり黄色く色づいて、見た目もきれいでしょう?」
こてらさんのキッチンのあちらこちらには、保存食の瓶が。保存食作りはもはや、暮らしの一部。つい数日前にも、ミニきゅうりを見つけてピクルスを漬けたと教えてくれました。保存容器も素敵で、漬けている様に思わず見とれてしまいます。
「“いいガラス容器”があると、保存食を作ろうかなという気持ちになるんですよね。発酵などで変化する様子を見たり、眺める楽しさが保存食作りにはあると思います」
ピクルスを漬けた保存容器は、ガラス作家の鷲塚貴紀さん作。
子どものころから冬に欠かせないというのが、粕汁。「ほぼ毎朝、母が作ってくれたものを飲んで、学校に通っていました。体が温まりますし、肌の調子もよくなる気がします」
粕汁に少しだけ白味噌を加えるのが、京都出身のこてらさん流。「私は、酒粕をたっぷりと使った、ポタージュのように濃厚な粕汁が好き。せん切りの大根とにんじん、油揚げはマストで、ちくわで練り物の旨味を加えるとおいしいです。具は家庭によって違うようで、豚肉やこんにゃく、せりを入れる友人もいますよ」
酒粕は、好みのものをたっぷり買ってきて、すぐに使う分をバットに入れて冷蔵庫へ。残りは冷凍し、年中保存しているそう。「今ではいろいろなものが選べるようになりましたが、私はしっかりとした風味の、昔ながらの板粕が好みです。銘柄によって風味がまったく違うのも楽しいですよね」
フードコーディネーター、料理家。スパイスや香味野菜の香りを生かした料理や保存食に定評があり、スタイリングなど食まわりの幅広い分野を手掛ける。人気テレビ料理番組の講師も担当中。果樹やハーブ、花などが広がる、ベランダガーデニングも話題に。著書に『レモンの料理とお菓子』(山と溪谷社)、『料理がたのしくなる料理』(アノニマ・スタジオ)など。
https://www.instagram.com/osarumonkey/