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手仕事カレンダー
vol.10 納豆と米麹、
菌の違うふたつの発酵でうまみたっぷり。
minokamoさんの「納豆麹」
2024/02/08
手仕事カレンダー
2024/02/08
冬から春に移り変わるこの時季、体調管理が難しいと感じる人は多いのでは? そんな時こそ、手軽に食べられる、身近な発酵食品の出番です。
今回紹介するのは、納豆と米麹、ふたつの定番発酵食品で簡単に作れる「納豆麹」。「minokamo」の名前で、全国を訪ね歩き、各地の食文化や食材を活かした料理を提案している長尾明子さんに、その魅力と作り方を教えてもらいます。樽と重石で漬けている漬物の話と、だからこそ思いついた「漬けている間を楽しむアイデア」も語ってくれました。
東北地方には、納豆と米麹を合わせた郷土食がいろいろとあります。長尾さんも、宮城・仙台を訪れた際に市販品を購入して試したのが、納豆麹との出合いでした。発酵食品を組み合わせた、そのおいしさに驚いたそう。
「納豆の香りや味わいも単体で食べるよりもまろやかになり、うまみも複雑になって、味わい深いのです。米麹をそのまま混ぜてたっぷりと食べられることにも惹かれて、自分で作るようになりました」
たんぱく質や食物繊維など栄養が豊富で、整腸作用のある納豆菌が含まれた納豆。栄養を分解して消化吸収を助ける酵素が豊富な米麹。ふたつをいっしょにとることで、体をすこやかに整えてくれる効果も期待できます。「野菜を入れると彩りにもなりますし、栄養バランスもよくなりますよ」
どの家庭にもある材料でシンプルに作れるのも魅力のひとつ、と長尾さん。「沸騰させた熱々の酒とみりんに、にんじんやしょうゆ、しょうがを加え、そのうちに温度が下がったら米麹を加えます。粗熱がとれたら納豆を混ぜ、冷蔵で2〜3日おいたらできあがり。混ぜるだけで簡単でしょう?」
納豆と米麹は同量、と覚えると便利。「とはいえ、納豆は1パックあたりの分量が、さまざまですよね。麹に対してやや少なくてもおいしくできるので、お手持ちの作りやすい分量で試してみてください」
いろいろな納豆や米麹の組み合わせを試して、自分好みの味わいや食感を探す楽しみも。「私は、豆の粒がしっかりとした納豆が好きです。今回は宮城の『川口納豆 国産中粒三つ折』を使って作ってみました」
2.鍋にみりん、酒を入れて中火にかける。沸騰したら火を止め、熱いうちににんじんを加えて混ぜ、さらにしょうゆ、しょうが、昆布の順に加えて混ぜる。
3.②の汁が40℃ほどになったら、米麹を手でほぐしながら加えて混ぜる。粗熱がとれたら納豆を加えて混ぜ合わせる。
朝ごはんのときなど、ごはんのお供にするとぴったりの納豆麹ですが、長尾さんは、食材にかけたり、和えたりして、“調味料感覚”で幅広く使っているそうです。
「豆腐や山いもなどの野菜、刺身などにかけるだけで、簡単にごちそうができます。酒のアテとしても手軽でいいですよ。魚のフリッターなど揚げ物にかけるのもおすすめです」
うどんやパスタなどの麺類にさっと和えても、言わずもがなのおいしさ。「忙しい日のランチや夜遅くのごはんにも、納豆麹はストックしておくと心強いんです」
長尾さん宅のキッチン周りでひと際目をひくのが、立派な木の味噌桶。これに毎年、味噌を仕込んでいます。「木の桶で作ると、味噌の水分がほどよく飛んで、濃厚な味噌が漬けられますよ」
味噌以外にも、さらにお楽しみが。できた味噌を使いきり、また次の冬に仕込むまでの間、空いた味噌樽で、祖母の思い出の味でもある白菜漬けを作るのが、毎年のルーティンに。
「子どものころ、祖母の家にあった漬物小屋でじっくり発酵した漬物のおいしさを思い出しながら作っています。自然の発酵はそのときどきで違うので、その具合に寄り添いながら、日々の変化も楽しんでいますよ。大根や赤かぶ、にんじんなどを入れて切り漬けを作ることも。今日はどんな感じかなと自分で確かめながら、途中、つまみ食いするのもいいものです(笑)」
味噌桶は、長崎・五島列島の福江島にある桶屋「桶光」のもの。おひつも愛用。
昨年から、重石を載せて漬けるようになったそう。「祖母が住んでいた、岐阜の家の裏で、壺と2個の漬物用の重石を見つけたんです。祖母が使っていたものですが、近所のおばちゃんからも『壺でつけたのが一番おいしいでね』という話を聞き、試したくて、早速リュックに入れて東京に持ち帰りました(笑)」
最初は重石を2個載せてぎゅっと水分を出し、かさが減ったら1個にして漬けていきます。「じっくりと漬かるからか、じんわりとおいしい漬物になります」
さらに、おいしさだけではない楽しみにも気づいたといいます。「漬け途中、白菜から水分が抜け、重石の位置も徐々に下がり、見た目が変化していく様子を眺めていると、きっとおいしいだろうなと食べる前からワクワクします」
「桶や重石を使うのは、ハードルが高いかもしれません。でも、軽く塩もみした野菜を小ぶりのガラスの保存瓶に入れ、その上に小さな石をのせて野菜が水分に浸かるようにすると、手軽に漬ける過程も楽しめますよ」
料理家・写真家。岐阜県の美濃加茂市生まれ。岐阜の祖母と過ごした経験がきっかけとなり、全国各地の郷土食や食文化を調べ歩き、「minokamo」名義で現代に馴染むレシピを考案。器づかいの提案やフードスタイリングなども手掛ける。東京と岐阜にある、祖母が住んでいた築100年ほどの古民家の二拠点で活動中。著書に『粉100、水50でつくる すいとん』(技術評論社)、『料理旅から、ただいま』(風土社)など。
https://minokamo.info