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発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」
Vol.12 炊きたてごはんに
鰹節と糠漬けを添えて。
中元千鶴さんの
「ごちそう発酵ブランチ」
2024/05/09
Vol.12 炊きたてごはんに鰹節と糠漬けを添えて。中元千鶴さんの「ごちそう発酵ブランチ」
発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」
2024/05/09
食にかかわるプロに、お気に入りの「推したい発酵食」を教えてもらう本連載。今回、お話を伺うのは、ヘルシー料理研究家の中元千鶴(なかもとちづる)さんです。
食べて元気に美しくなる食事を提案し続ける中元さんは、発酵食の健康・美容効果にも注目。ヘルシーでおいしい食事をと考えると、自然と発酵食が毎日の食卓に登場するようになったと語ります。そんな中元さんが、月に1〜2度の楽しみにしているのが、とことん白ごはんを堪能しつくす“おうちイベント”です。炊きたてごはんの脇をかためるのは、鰹節に糠漬けに味噌汁。発酵づくしの「ごちそうブランチ」の日に密着しました。
「おいしいごはんって、それだけでごちそうですよね」と笑う中元千鶴さん。自宅で精米するほどの筋金入りのごはん党です。
「お米は千葉県の多古町で作られている多古米を、玄米のまま取り寄せています。普段の食事は、圧力鍋で炊いた玄米が中心。黒豆や大豆を一緒に炊くと、甘みが出ておいしいですよ。白米は月に1〜2度の楽しみに。10年来愛用している羽釜で、ふっくらつやつやに炊き上げます。毎日精米するとなるとちょっと大変ですが、月に1〜2度なら特別感もあって苦になりません」
「米を激しく対流させながら高温で一気に炊き上げるのが、羽釜の特徴。熱伝導率が高いので、加熱は短時間でOKです」
米2合に対して、水は450mlが目安。30分浸水させたら、タイマーを15分にセットして火にかけます。沸騰するまでは強火、吹きこぼれたら弱火に、トータルで15分加熱したら火を止め、蓋をしたまま15分蒸らせば、出来上がり。土鍋や鋳物の鍋で炊くときにも応用できる、中元さんおすすめの炊き方です。
「精米したての羽釜ごはんは、甘みがあって風味も抜群。お米の国、日本に生まれてよかったと感じさせてくれます。ほかほかごはんに削りたての鰹節をのせて醤油をちょろっと垂らせば、もうそれだけで最高のごちそう。ほかにおかずはいらないほどです」
中元家でごはんのお供といえば、真っ先に名前が上るのが削りたての鰹節です。
「削りたての鰹節は、香りが高くて上品な旨味。羽釜ごはんの日には、張り切って鰹節を削ります」
鰹節は、大きく荒節(あらぶし)と枯節(かれぶし)の2種類に分けられます。かつおを茹で、燻して乾燥させたものが荒節。荒節の表面を削ってカビ付け・乾燥を2回以上繰り返したものが枯節です。カビ付け・乾燥をさらに繰り返して、じっくり熟成させたものは本枯節と呼ばれます。
「カビ付けの工程を経る枯節、本枯節は、微生物の働きを利用した発酵食品です。タンパク質や脂肪が分解され、旨味成分のアミノ酸に。深い旨味と雑味のないすっきり上品な味わいは、発酵パワーのなせる技ですね。鰹節や昆布の出汁は和食の基本ですが、出汁をきかせると塩分を控えめにしてもおいしく感じられるのもうれしいポイントです」
「鰹節は世界一硬い食品というだけあって、削るのは少々手間。でも、このおいしさのためなら頑張る価値があります。カリッと焼いた厚揚げや冷奴、この鰹節をかけるだけでいろんなものがとびきりおいしくなるんです」
鰹節を削る家庭は少なくなったなか、中元家ではもう10年ほど築地の鰹節問屋で本枯節を購入しているといいます。
「夫婦で築地に買い物に出かけたとき、木目フェチの夫が削り器に一目惚れしたことがきっかけです。その足で鰹節問屋に行き、お店の人がおすすめする本枯節を買い求めました。削り方も丁寧に教えてくれましたよ。そんな経緯もあって、鰹節を削るのは夫の担当。削るのにはある程度の力が必要なので、わたしよりも断然夫のほうが上手です。わたしが精米や炊飯、おかずの準備をしている間に手際よく削ってくれます」
もうひとつ、中元家の食卓に毎日上がる副菜が、糠漬けです。
「にんじん、かぶ、きゅうりやなすなどのほか、ブロッコリーの茎やキャベツの芯も糠漬けに。糠漬けには、植物性乳酸菌がたっぷり含まれています。日本人の腸には、植物性乳酸菌が合っているといわれますね」
元気な糠床を維持するために活躍するのが、精米するときに出る糠です。
「毎日糠漬けを食べていると、糠床がだんだん減っていってしまいますよね。月に1〜2回の精米は、足し糠のサイクルにもぴったり。糠床を一定量に保つとともに、野菜の水分で糠床が水っぽくなるのも防げます。足し糠のやり方は簡単! 精米のときに出た糠に塩をまぜたものを、糠床に混ぜるだけです。底から掘り起こして、まんべんなく空気を入れるのがポイントです」
羽釜ごはんの蒸らしが終わったら、いよいよお待ちかねのブランチタイム。今日の献立は、ピカピカの白ごはん、かぶと干し椎茸の味噌汁、納豆、そして削りたてのふわふわ鰹節にブロッコリーの茎とにんじんの糠漬けです。
「ごはんの甘みや旨味を味わいたいから、合わせるおかずはシンプルに。糠漬け、しょうゆ、味噌、鰹節、子どものころから食べ慣れている発酵食は、日本人の味覚に合いますね。夫に、『最後の晩餐に食べたいものは?』と聞いたら、うちの鰹節ごはん、と言っていました(笑)。地味で素朴だけれど、しみじみと体と心が喜ぶおいしさです」
次回は、お菓子料理研究家の森崎繭香さんにバトンを渡します。どうぞお楽しみに!
ヘルシー料理研究家
ヘルシー料理研究家
美容・健康・ダイエット関連を中心に、レシピ開発や栄養監修、講演、執筆活動などを行う。「食べてやせる美肌ダイエット」を提案。低カロリー&減塩で、野菜がたっぷりとれるヘルシー料理に定評がある。著書に『テレワーク時代のラクうまごはん』など。
オフィシャルサイト:https://www.nakamoto-chizuru.com/