発酵を訪ねる

京都の宿「梅小路ポテル京都(Umekoji Potel KYOTO)」
で醗酵三昧・梅小路醗酵所編

2024/05/30

京都の宿「梅小路ポテル京都(Umekoji Potel KYOTO)」で醗酵三昧・梅小路醗酵所編
京都の宿「梅小路ポテル京都(Umekoji Potel KYOTO)」で醗酵三昧・梅小路醗酵所編

2020年に梅小路京都西駅5分の場所に、人や文化が交流しあい縁が生まれる場所としてオープンした「梅小路ポテル京都」。ホテルに併設する梅小路醗酵所は、京都の名産や厳選した日本各地のお酒を扱い、飲食スペースを備えた施設です。最大の特長は、ショップの一角にある麹室。麹づくりやワークショップを通して醗酵の魅力を発信する、梅小路醗酵所のブランドマネージャー兼デザイナーの山口真央さんにお話を伺いました。

通学途中の子どもたちや
ご近所さんも
思わず足を止めるガラス張りの麹室。

梅小路醗酵所のシンボルは、通りに面したガラス張りの麹室。スタッフの中にも、通りがかりに目に留まり、一体何をしているんだろうと興味を抱いたことから働き始めた方もいるほど。なぜガラス張りの麹室が生まれたのでしょうか?

マネージャーの山口さん。オリジナル商品のデザインも担当。

「梅小路醗酵所を運営する本社は、昭和10年に大阪で開店した小さな酒屋から始まった『上田酒店』です。梅小路ポテル京都のオープン時にお声がけいただいて、お店をつくることになったのですが、最初は単純にお酒にまつわる施設をつくるというところからのスタートでした。なにかシンボリックなものをと考え、ホテルの名前も梅“小路”ですし、“麹”をテーマにしようと、自分たちで麹をつくってみることに。ガラス張りにしたのは、多くの方に興味を持ってもらいたいからでした。でも、もともと麹室は酒蔵の一番奥にひっそりとあるような暗く閉じられた神聖な場所。それをガラス張りにして、外からでもどこからでも見えるようにしてしまおうというのはチャレンジで、私たちにとって大きな挑戦でもありました」

梅小路醗酵所の店内。窓の奥に麹室があり、店内からも麹づくりの様子を見学できる。

麹室の入り口に掲げられたサイン。
梅小路醗酵所でできる4つのこと「のむ」「かう」「かもす」「まなぶ」のうちの大きな柱のひとつ。

それでもガラス張りの麹室にこだわったのは、多くの方に麹の文化を知ってもらいたいという思い。

「お酒だけでなく、醤油や味噌など麹はさまざまな日本の醗酵文化には欠かせません。でも、子どもはもちろん大人でも実際に麹そのものを見たことのない方もいるなかで、開かれたこの場所を作ったことで、たくさんの人が興味を持ってくださり、小学校や児童館の方からは子どもたちに麹づくりの体験ができないかという相談も受けるようになり、広がりを実感しています」

毎週3日間かけて麹を製造。
種麹は京都・東山の「菱六もやし」の黄麹と、愛知県の老舗「麹屋三左衛門」の黒麹菌を使用。

まるでディスプレイのように並ぶ、麹づくりの道具たち。古くから受け継がれてきたものの美しさがある。

ところで、山口さんはデザイナー出身、会社も酒屋としては歴史があるものの、麹づくりは初めてだったそう。

「これまではつくられたものを売るだけだったのですが、製造から私たちも経験することで、ものづくりの大切さを発信し、醗酵文化を盛り上げていきたいという思いで始めました。麹づくりは、お隣の滋賀県にあるハッピー太郎醸造所の池島幸太郎さんに教えていただきました。麹菌を育てるのは本当に大変で、最初の頃は失敗もありましたが、3〜4年くらい経ち、気候や湿度なによってベストなつくりかたの違いが分かるようになってきて、ようやくこの場所ならではの麹づくりを自分たちで考えられるようになってきたところです」

自家製の麹はおみやげに購入することも可能。米麹、玄米麹、黒麹に使用されているのはこだわりの特別栽培米。
酒米麹は実際に酒蔵で使われている五百万石を使用し、精米歩合は純米吟醸レベルの60%。

どの米麹を購入するか迷ったら、4種類の麹のあじわいの違いを楽しめる甘酒飲み比べがおすすめ。
左上から時計回りに、贅沢な甘みの米麹、プチプチした食感が楽しめる玄米麹、すっきりした喉越しの酒米麹、
酸味がクセになる黒麹。

オリジナル調味料がつくれる
麹のワークショップ

醗酵所のコンセプトは「クラシックでモダンな世界を届けたい」。ホームページにも、「先人たちから引き継がれてきた麹や醗酵の恩恵を、現代に生きる私たちが最高の楽しみ方を提供したい」と掲げられています。その方法のひとつが、店内で定期的に開催されているワークショップです。貴重な麹作り体験のほか、ユニークなのが米麹とスパイスや素材を組み合わせてつくる麹調味料体験です。

まるで理科の実験のような試験管ボトルが目をひきます。

「すでに多くの方は、甘酒や塩麹は知っていると思うので、もっと新しい麹の使い方や魅力を発信したいとワークショップの内容を考えました。目指したのは、もっと気軽に日常の食生活に麹や醗酵食材を取り入れてもらえること。そこで、パスタに和えたり、お肉につけたりできる『フレーバー塩麹』を考案しました。塩麹にフレーバーの風味を加えた変わり種です。ワークショップでの合わせる食材は季節によって変わりますが、京都宇治の抹茶やカレー粉、ローズマリー&ピンクペッパーなどから4種類のフレーバーを選んでいただいて、オリジナルの塩麹づくりに挑戦していただいています。例えば、抹茶をあわせると和風のジェノベーゼのような風味になるんですよ」

また、ワークショップでは調味料づくりのみを体験するのではなく、麹について学ぶところからスタートするのもこだわり。麹や日本伝統の醗酵食文化への理解が深まるカリキュラムになっています。

ワークショップでは日によって、できたての米麹の麹菌を顕微鏡で観察できることも。

店内にもさまざまな麹が展示されている。

知れば知るほど沼にハマる
美味しくて、
健康にも美容にもいい麹の魅力

もともと健康や美容に興味があり、醗酵食が気になってはいたという山口さん。しかし、梅小路醗酵所に携わるようになるまでは、ここまでハマると思っていなかったそうです。

「学べば学ぶほど、知れば知るほどどんどん麹や醗酵の魅力を知り、すっかり沼にハマりました。お店には健康を意識されている方も多く来店しますが、もっと広く、若い方や子どもたちにも醗酵や麹が注目されるといいなと思っています」

窓から見える麹づくりに興味を持ったり、健康のために醗酵食を学んだり、単純に美味しさに惹かれて麹を取り入れたり…。きっかけはひとそれぞれかもしれませんが、梅小路醗酵所にはその “きっかけ”がたくさんちりばめられています。

「米麹を袋にいれた米麹100%の『こうじ湯の素』というオリジナル商品があるのですが、日本酒をつくる杜氏さんの手が綺麗なことに着目したことから生まれたものです。食べて美味しく健康にもよい麹は、美容にもいいという魅力たっぷりな素材なんですよね。今後も新しいコンテンツをもっと増やして、たくさんの方が麹や醗酵と出会えるきっかけづくりをしていきたいです」

自家製の「麹」や「こうじ湯の素」のほか、日本各地の厳選されたお酒などが並ぶ店内。

梅小路醗酵所

梅小路醗酵所

住所:
京都府京都市下京区観喜寺町15 梅小路ポテル京都内
TEL:
075-744-6557
URL:
https://hakkojo.com/

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