手仕事カレンダー
Vol.12 牧野直子さんの「ヨーグルト味噌」で
夏の体を元気に!
さわやかなのにまろやか、
大活躍のお手軽発酵だれ
2024/07/18
手仕事カレンダー
2024/07/18
暑い夏、料理は極力シンプルに、キッチンに立つ時間をできるだけ少なくしたいもの。そして、食欲がわかない日でも食べやすい、さわやかな味わいだとなおうれしいですね。
そんな願いがかなう、「ヨーグルト味噌」を料理研究家・管理栄養士の牧野直子さんが紹介してくれました。普段からストックしているという、「豆豉のしょうゆ漬け」についても話を聞きました。
最近、再び注目されている「水切りヨーグルト」や「ヨーグルト漬け」など、ヨーグルトをテーマにレシピを考案する機会がこれまでも多かったという、牧野さん。プライベートでも毎朝食べて、ヨーグルトの健康面の効果を実感しているそうです。
「かれこれ30年ほど毎朝、ヨーグルトを食べているのですが、私も家族も風邪をほとんどひかないんですよ。おいしいから続けられますしね。私は、ドライフルーツを漬けていっしょに食べるのが好きです」
乳製品は、たんぱく質や脂質がとれるだけでなく、カルシウムを豊富に含みます。「特に女性は骨粗しょう症になりやすいので、乳製品はきちんととりたいもの。『大人になって、牛乳を多くは飲めなくなった』という声をよく聞きますが、ヨーグルトだと食べやすいですし、牛乳とほぼ同じ栄養価がとれます。さらに、ヨーグルトは乳酸菌も含むので、整腸作用や免疫機能の向上も期待できますよ」
売り場にはたくさんの種類が並んでいますが、どう選べばいいのでしょうか?味わいや食感の好みも大切ですが、牧野さんのおすすめは、各社独自の乳酸菌が持つ、整腸作用以外のプラスアルファの機能で選ぶこと。
「さまざまな乳酸菌が開発されていて、たとえば『ガセリ菌SP株』は内臓脂肪を減らす機能が認められ、『1073R-1乳酸菌』はインフルエンザなどの感染症の予防効果があったとされています。自分の気になる症状に合わせて、選んでみては? 種類を決めたら、食べ続けることも大切です」
ヨーグルトの料理への活用法として、牧野さんの定番になっているのが「ヨーグルト味噌」。家によくあるふたつの発酵食品を混ぜれば、旨味たっぷりの調味料が手軽にできます。
「ヨーグルトが味噌の塩けを、味噌がヨーグルトの酸味をやわらげて、まろやかな味わいに。“和風マヨネーズ”感覚でディップにしてもいいですし、漬け床にして野菜を漬けてもみずみずしく、塩けも穏やかでさわやか。ぬか床のような面倒なお手入れは必要なく、暑い夏にもおすすめです」
肉や魚を漬けておけば、忙しい日のメインの一品が完成。「冷凍しておくと、お弁当のおかずにも便利ですよ」
1.ジッパーつきの保存袋に「ヨーグルト味噌」の材料を入れて、袋の上からもんで均一に混ぜ合わせる。
2.野菜に塩をすりこんで10分ほどおき、ペーパータオルで表面の水けをふく。
3.保存袋に②を漬け、冷蔵室で一晩おく。
ヨーグルト味噌の、マイルドな塩けとさわやかな味わいは、まだまだ使い道が。牧野さんのイチオシは、炒め物の味付けです。
「肉と野菜を炒めて、ヨーグルト味噌を加えるだけ。驚くほど簡単にできますが、まろやかなコクがありながらさっぱりと食べられます。少量のおろしにんにくを加えるとさらに食欲をそそり、夏バテしたときにもおすすめ。肉ではなく、めかじきなどの魚をそぎ切りにして炒めてもおいしいです。そのほか、ホイル焼きのたれにも合いますよ」
豚こま切れ肉200g、パプリカ(赤)1/2個、玉ねぎ1/4個を植物油大さじ1で炒めて、
ヨーグルト味噌大さじ2におろしにんにく少々を加えて味付け。
「コロナ禍以前は、料理仲間で集まって、発酵食品をテーマにいろいろなものを作ったり研究していたりした時期がありました。そのときに仲間が教えてくれたのが、『豆豉(とうち)のしょうゆ漬け』です」と牧野さん。
「豆豉は塩辛いので、使うときには細かく刻む必要があるのですが、しょうゆに漬けておくとやわらかくなって刻みやすくなり、使いやすさがアップします。豆豉を使いやすくペースト状にした『豆豉醬』も売られていますが、原材料を見ると、意外といろいろなものが入っているんですよね。自分でしょうゆに漬けるほうがシンプルでいいなと思います」
常備し始めて、10年にはなるそう。「麻婆豆腐やチャーハン、炒め物などに少し加えると、コクのある旨味が加わっておいしくなります」
豆豉になじみがない人もいるのでは? 豆豉は、黒大豆を塩、麹や酵母で発酵させ、干したもの。塩けが強いので使うのは少量ですが、深いコクと旨味、独特の風味が、中華料理を本格派に底上げしてくれます。
豆豉30gにしょうゆ大さじ5(90㎖)を加えるだけ。冷蔵室で保存し、半年を目安に、1年ほどで使いきりましょう。「豆豉だけでなく、しょうゆも使えます。豆豉の香りが移っているので、たらりとかけるだけで、本格的な風味に。たとえば、ごま油と合わせて、カルパッチョの中華風ソースに活用してみてください」
また、『材料は国内産を使いたい』という人にもぴったりな食材も教えてくれました。静岡・浜松や愛知・豊橋などで作られている「浜納豆」です。国産大豆を麹菌で発酵させて塩漬けし、天日干しにしたもので、せん切りしょうがも入っているのが特徴的。豆豉に製法も味も似ています。「健康オタクで長寿だった、徳川家康が好んだことでも知られる、伝統食材。豆豉よりクセが少し弱いので、オリーブやアンチョビのようにも使っています」
料理研究家・管理栄養士・ダイエットコーディネーター
料理研究家・管理栄養士・ダイエットコーディネーター
「スタジオ食(くう)」主宰。健康や美容などの幅広いテーマで、レシピの開発や栄養指導や講師活動を行う。手軽に作れて、栄養にすぐれたレシピを提案。著書や監修本に『70歳からの簡単、美味しい健康レシピ』(成美堂出版)、『おいしい かんたん 作りおき 高血圧・減塩レシピ』(ナツメ社・料理レシピを担当)など多数。