受け継がれた技と新風が交わる食の舞台、新島へ
vol.4 「新島農協」で美味しい発見!島野菜のシェイク
2024/12/12
vol.4 「新島農協」で美味しい発見!島野菜のシェイク
受け継がれた技と新風が交わる食の舞台、新島へ
2024/12/12
新島の中心部に位置する新島農協は、島で農業を営む方々にとって欠かせない拠点であり、島民にとっても、新鮮な野菜を日常的に手に入れるための大切な場所。最近では観光で訪れる人々にも注目されています。その理由のひとつに地元の野菜を使ったユニークなシェイクや加工品があります。島民の暮らしが垣間見えるとともに、新島の豊かな野菜の魅力を存分に味わうことができる新島農協を訪ね、島の野菜の魅力に触れてきました。
「私たちは、地元の農家と協力し、季節ごとの新鮮な野菜を提供しています。島民はもちろん、観光で訪れる皆さんにも楽しんでいただきたいと、さまざまな商品も取り揃えています」
そう語るのは、新島農協の店長、伊藤梢さん。新島農協は、地元の特産品を手に入れるための便利な場所であり、島民にとっても生活の一部です。特に観光シーズンには、多くの人々が地元産の新鮮な野菜や特産品を求めて足を運びます。
新島農協で観光客に人気の高い商品といえば、オリジナルのシェイクです。意外な組み合わせですが、実はその誕生の背景には農家との会話がありました。
「ふれあい農園という、いちごの摘み取り体験ができる農園があります。そこで、形がいびつだったり落ちてしまったいちごを無駄にしたくないという話を聞きました。何か良い方法はないかと考え、生まれたのが、農協に訪れた方々に一年中楽しんでもらえるシェイクです。あめりか芋や明日葉もメニューに加え、2年前から販売しています。素材は旬の時期に加工して冷凍しているので、いつでも新鮮な味わいを楽しんでいただけます」
もともと本土出身の伊藤さんが、結婚を機に新島に移住したのは16年ほど前のこと。新島に来た当初、驚いたのは野菜の美味しさだったといいます。
「特に玉ねぎの甘さに驚きましたね。新島は砂地のため、水はけが良く、旨みが凝縮されるのかもしれません。それに、同じ東京都でありながらも食文化は大きく異なり、明日葉や島らっきょう、あめりか芋など、初めて口にする野菜も多くありました。限られた食材を工夫して調理する文化が根付いているのも印象的でした。島の主婦は、みなさん本当に料理上手なんです」
個性豊かな野菜のなかでも、新島野菜の代表といえば「あめりか芋」です。稲作に適さない地質の島でも育つため、昔から島民の暮らしを支える貴重な食材です。
「この『あめりか芋』という一風変わった名前の由来には諸説あり、例えば他のさつまいもに比べて色が白いからという説や、かつてアメリカから渡ってきたものだからという話も聞いたことがあります。味わいはさっぱりしたさつまいもという感じで、ひと手間加えることで美味しさがより引き立ちます。特に私のおすすめは新島の郷土料理でもある『芋もち』や『芋だんご』。各家庭ごとの味があり、古くから食べられてきたものです」
白い砂と太陽の恵みが育む新島ブランドの野菜を、伊藤さんおすすめの食べ方とともにご紹介。
明日葉
明日葉は、伊豆諸島に自生するセリ科の植物で、ほのかな苦味がクセになる栄養豊富な野菜です。農薬を使わずに育てられた新芽の柔らかい部分を天ぷらにし、それを乗せた天ぷらそばも有名です。収穫時期は春(3月~4月)と秋(11月~12月)の2回。
「さっと茹でてお浸しにしても美味しいです。明日葉とツナマヨで和えたものもオススメ。学校給食にも出るほど、島では日常的に食べられる野菜ですね」
島らっきょう
島らっきょうは砂地特有の特産品で、一般的ならっきょうよりも小ぶりで、ネギのような辛みが特徴です。天ぷらや酢漬けにするほか、旬の時期には生で食べられるほど柔らかく、甘みを感じられます。収穫時期は3月から4月頃。
「マヨネーズと味噌を混ぜたソースに、生のままつけても美味しいですが、豚肉を巻いて焼くと子どもたちにも人気の我が家の定番メニューになります」
たまねぎ
新島特有の砂質土壌と強い季節風を冬の間中耐え抜いたたまねぎは、旨みと甘みがぎっしり詰まっています。収穫時期は4月頃。
「水にさらす必要がないくらい、驚くほど甘いので、生のままスライスしてサラダにするのが一番美味しい食べ方です。」
島唐辛子
新島の島唐辛子は風味が良く、ガツンとくる辛さで、辛い物好きにはたまらない一品。赤唐辛子は料理全般に、青唐辛子は爽やかな辛味が特徴で、お刺身の薬味としてもよく使われます。収穫時期は7月から9月頃。
「私は辛いのが苦手なのであまり食べませんが、新島で生まれ育った夫の大好物。生の唐辛子を刻んで鍋の薬味にしたり、乾燥させたものを料理に使うことが多いですね」
新島農協には新鮮な野菜だけでなく、地元の農産物を使った加工品もずらりと並びます。
「生産者は年々減少しているのが現状です。名産である明日葉も今では生産者はわずか2軒。そんな中でも、農家を中心に新島野菜を使った加工品が次々に誕生して、島の農業を盛り上げようという動きが見られるのはとても嬉しいことです」
農作物は加工品にすることで保存食としての役割も担い、観光客にとっては旬の時期に限ることなく年間を通して島の野菜を手にできるように。さらに農家にとっても新たな収入源となります。
島で長年作り続けられてきた野菜から生まれる個性豊かな商品を眺めていると、これからも新島農協が新しい風を吹き込み続ける未来が見えてきます。島の農業と生活、そして訪れる人々をつなぎ、島の食文化を次世代へと受け継いでいく中心的な役割を果たし続けるこの場所へ、新島を訪れた際には立ち寄ってみてください。
東京竹芝桟橋から高速ジェット船で2時間20分、または夜行大型客船で8時間30分。
その他、神奈川県久里浜港、静岡県下田港からの船便もあり。
東海汽船 TEL:03-5472-9999 または 0570-005710
URL:https://www.tokaikisen.co.jp/