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発酵を訪ねる
発酵調味料でおいしく笑顔に。
「Cafe香乃や」の発酵デリプレート。
2025/01/23
発酵を訪ねる
2025/01/23
東京・二子玉川と用賀の間、閑静な住宅街が広がる瀬田に佇む「Cafe香乃や」。自家製の発酵調味料を使ったランチメニューが好評で、リピーターを増やしているカフェです。店を開いたきっかけや発酵にこだわる理由について、店主の高田香さんにお話を伺いました。
2023年8月に「Cafe香乃や」をオープンし、日々奮闘している店主の高田香さん。20年ほど有名ベーカリーカフェで経験を積んだ後に、念願だったカフェを開きました。59歳で新しい挑戦をしようと決意したきっかけは、病気を患ったことでした。
「夫をすい臓がんで亡くし、その翌年には私自身も乳がんを患う経験をしました。もっと食事に気を遣って、健康を見直したいと思った時に出会ったのが、発酵食スペシャリスト北村愛先生の発酵講座。そこで学んだ発酵調味料はなによりもおいしくて惹かれたんです。それまで身体にいいものってあまりおいしくないという先入観があったのに、おいしくて、しかも簡単にできるというのが良かったんです」
塩麹などの発酵調味料を手づくりするうちに、「いつかお店を開いてみたい」という長年の夢に挑戦することに。学んだ発酵調味料を使った料理を提供する店を開きました。
「残りの人生を考えた時に、チャレンジしてみたい! という気持ちが高まったんです。まわりには止めておいた方がいいと反対されつつも、言われるほどに燃えてしまって(笑)。あれをすればよかったと後悔したくなくて、大変なことに挑戦しようと思ったんです」
「Cafe香乃や」で提供しているのは、高田さんお手製の塩麹、醤油麹、発酵ケチャップの他、味噌や甘麹などの発酵調味料を随所に取り入れた料理。ランチで人気の発酵デリプレートは、運ばれてくるとワクワクするような華やかなビジュアルでボリューム満点。野菜を中心にしながら、魚や肉も楽しめるようにバランスを大切にしているそう。
「メイン料理をあえてつくらず、いろんなものをちょっとずつ。味付けも和と洋をミックスさせて、これは何だろうと思ってもらえるような構成にしています」
塩麹と甘麹、酢、オイルを混ぜた発酵ドレッシングをかけたサラダ、おから入りのコールスロー、甘麹とねり梅ソースをかけた白身魚、高野豆腐のキッシュ、塩麹鶏ハム、味噌や甘麹のソースをかけて蒸したカボチャ、豆腐を塩麹に漬けておぼろ豆腐のような食感を楽しめる冷奴、塩麹とヨーグルト、味噌を昆布出汁で仕立てた腸活スープなど、その時々のメニューが、満足感とともに驚きもたっぷりの品々が並びます。
その他にもキーマカレーやサンドイッチ、カオマンガイなど、日替わりの発酵ランチプレートも。高田さんが青森出身ということから、青森から取り寄せたりんごのパウンドケーキなど、スイーツメニューも充実しています。
「身体にいいものを提供したいという思いは持っていますが、おいしく食べてもらいたい。うちは小麦粉やバターなどの乳製品も使うし、デザートには砂糖も使っています。小麦粉のパンだけでお腹いっぱいにするのではなく、野菜やお魚、お肉もバランスよく食べればいいという考え方。そこに発酵によって旨みや甘みが高まった発酵調味料を取り入れることで、健康な食事と言えると思っています」
食べるとほっとできて、笑顔になれるメニューを提供している高田さん。店の料理を通して、発酵調味料の魅力も伝えています。
「発酵を生活に取り入れることって、決して難しいことではないと思うんです。特に発酵調味料を使うことって簡単。特定の発酵食品を毎日食べるのは大変かもしれないけれど、発酵調味料なら手軽。塩麹を塩の代わりに使ったり、お魚を漬けてみたり。豆腐に塩麹をかけてからラップをして、次の日に食べると抜群においしいんですよ。気軽に取り入れてほしいなと思っています」
オープンして1年半ほど経過し、リピーターのお客さんも増えてきたという「cafe香乃や」。まだまだ不慣れなことがあると言いつつも、手応えを感じるようになってきたそう。
「『忙しくて生活が乱れてくると、「香乃や」のごはんを食べたくなる』と言ってくれるお客さまがいて。うちのごはんを一回食べたからといってすぐに健康になれるわけではないけれど、自分の身体を気遣いたい時に来てもらえる場所になっていることが嬉しい。今は私だけのお店じゃないんだと思うようになりました。お花を生けてくれる花屋さんだったり、お客さまだったり、私は種をまいただけで、みなさんに水を与えてもらって成長できている。まだ手一杯なところはありますが、もっとお店が育っていけばいいなと思っています」