手仕事カレンダー
Vol.13 田中可奈子さんの
「自家製粒マスタード」で作る
ノンオイルマリネで春野菜のおいしさを満喫!
2025/02/20
手仕事カレンダー
2025/02/20
普段何気なく市販品を買っているけれど、自分で作ると断然おいしいもの——。ノンオイル料理を研究する料理研究家の田中可奈子さんがすすめてくれたのが、簡単に作りおきできる調味料「自家製粒マスタード」。
今回は作り方に加え、みずみずしさ、ほろ苦さなどが特徴の春野菜にぴったりなノンオイルのアレンジレシピを紹介します。さらに、ノンオイル料理をおいしく仕上げるために欠かせないという発酵食品「甘糀」の話もお伺いしました。
「自分で作れると知って試してみたら、あまりにも簡単でおいしくて驚きました」。田中さんがよく作るという粒マスタードは、からし菜の種である「マスタードシード」を米酢がベースの調味液にゆっくり漬けてから、好みの具合に粒をつぶして味をなじませるだけで、手軽に完成します。
自分好みの味わいに仕上げられるのも、手作りの醍醐味。
「辛みのもとになるマスタードシードは、イエローとブラウンの2種類を使いますが、ブラウンのほうが辛みや苦みが強く、配合の割合で辛さも調整できます。また、すっきりとした酸味が好きで米酢を使っていますが、リンゴ酢や白ワインビネガーなどに代えてもいいですし、スパイスやハーブで風味を加えても。自由に調整できるのって、いいですよね」
粒マスタードといえば、ソーセージに添えるぐらいしか使い道が思いつかない、余らせてしまうという人も。
でも、もっといろいろな使いこなしができると田中さんはいいます。
「まろやかな酸味とほどよい辛みで、ステーキやローストビーフ、ポトフなどに添えてもぴったり。
さらに、生クリームとまぜて加熱するだけで、肉や魚がごちそうになるソースが簡単に作れます。
野菜の持つ甘みや旨みもうまく引き立ててくれます。これから出てくる春野菜のようにやわらかくみずみずしいもの、ほろ苦いものに添えたり、あえたりしてもおいしいですよ」
田中さん作の粒マスタード。ねばりや食感は、マスタードシードの粒のつぶし具合で変わる。
※米酢は、好みの酢やワインビネガーに代えてもよい。
イエローマスタードシードとブラウンマスタードシードは合わせて30gになるように用意。
「レシピはイエロー2:ブラウン1の割合ですが、1:1にすると和がらしのようなキリッとした辛さになります。
はちみつを砂糖に代えてもいいですよ」
1.煮沸して清潔にした保存びんにマスタードシードを入れ、まぜ合わせたAを注ぎ入れる。
米酢、はちみつ、塩の調味液を注ぎ入れるだけ。シンプルな材料で作れる。
2.軽くふたをし、常温で3日ほどおく。途中、マスタードシードが液を吸いきって水けがなくなったら、かぶるぐらいに酢適量(分量外)を足す。
左は漬けて間もない状態、右は3日間おいた状態。漬けている間に、マスタードシードが液を吸ってふくらむ。
漬けた3〜4時間後にはかなり酢を吸っているので、様子を見て必要なら酢を足す。
3.ボウルにあけ、マスタードシードをスプーンの背などで好みの具合につぶす。
好みの粒々具合、ねばり具合になるようにシードをつぶす。
「私は全体をざくざくとつぶします。フードプロセッサーでつぶすと速いですが、つぶしすぎに注意して」
「作りたてでも食べられますが、時間をおくことで苦みや辛みがなじんでまろやかになり、おいしくなります」
「自家製粒マスタード」を活かして春野菜をたっぷりと食べるために、田中さんが教えてくれたのが、「ノンオイルマリネ」です。
マリネといえばオイルを使うイメージですが、「粒マスタードの風味がいいアクセントになり、甘糀を加えるとコクが出て、油なしでもおいしくなり、さっぱりと仕上がります」
今回は、やわらかくておいしい春のかぶとスモークサーモンのマリネを作ってくれました。「かぶの代わりにスナップえんどうやそら豆などでもいいですね。ほかにも、新玉ねぎとトマト、セロリ、いかの組み合わせでおかずマリネっぽくしたり、細切りにんじんとあえてラペ風に、せん切りにしてレンチンしたキャベツとあえてザワークラウト風にしたりして楽しんでいます」
かぶ200gは皮をむいて薄いいちょう切りにし、塩をしてしんなりさせ、軽く洗って水けをきり、
3〜4等分に切ったスモークサーモン80gとともに、マリネ液(白ワインビネガー、甘糀各大さじ2、
粒マスタード大さじ1、はちみつ少々、塩・こしょう各適宜)とあえてしばらくおく。
ライム(またはレモン、ゆずなどのかんきつ類)をスライスしてまぜ合わせる。
「ノンオイル料理のレシピを考えるにあたって工夫しているのは、油の役割をいかに他の食材で補うかということ。私が代わりによく使うのは、『甘糀』です」と田中さん。
「甘糀」は濃縮甘酒のことで、田中さんは米糀と米、水で発酵させて作るそう。「酵素の力で鶏むね肉などの肉や魚などのたんぱく質を分解してやわらかくしてくれますし、先ほどの『ノンオイルマリネ』のように調味料として加えるとコクが出て、オイルなしでも満足感のある味に仕上がります」
もちろん、甘みを生かして砂糖やみりんの代わりに使うことも。「ヨーグルトメーカーで作るとラクですが、炊飯器でもできますよ」
自家製の甘糀は、米100gで少しかためのおかゆを炊き、水を50㎖加えて50度くらいに冷ましてから、
米糀(乾燥のもの)100gをほぐして加え、55〜60度で約8時間保温。
「冷蔵で4〜5日おいてから使うと、甘みや乳酸菌の酸味が増します」。冷蔵で20日ほど保存可能。
甘糀を用いたノンオイル料理のよさが簡単に味わえると紹介してくれたのが、「甘糀ドレッシング」。甘糀に酢と塩を加えてまぜるだけで、あっという間にできあがります。具材を選ばない、まろやかでさわやかな風味も魅力です。
「コクが得られるだけでなく、自然なとろみがつくのがポイント。まるでオイルが乳化してとろみがついたようになり、サラダの具材によくからみます」
甘糀大さじ2、白ワインビネガー大さじ1、塩小さじ1/2、をまぜ合わせる。
料理研究家・国際薬膳食育師・フードコーディネーター
料理研究家・国際薬膳食育師・フードコーディネーター
自宅で料理教室を主宰し、家族が病気になったのをきっかけに、誰もが楽しめるノンオイル料理を研究する。著書に『オイルなし、グルテンなしの生地。おやつにもごはんにも食べたい米粉のマフィン』、『オイルなし、グルテンなしでからだにやさしい 米粉のシフォンケーキ』(ともに主婦の友社)、『クローン病・潰瘍性大腸炎の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)など。
https://www.instagram.com/kanako5279/