発酵に恋して。

発酵薬膳料理家・大竹宗久さんが伝えたい
「発酵×薬膳」とは?

2025/02/28

発酵薬膳料理家・大竹宗久さんが伝えたい「発酵×薬膳」とは?
発酵薬膳料理家・大竹宗久さんが伝えたい「発酵×薬膳」とは?

国際薬膳師・中医薬膳師で、発酵薬膳料理家として活動している大竹宗久さん。2023年に出版した著書『発酵×薬膳 心と体をスッキリ整える楽チンレシピ』は、世界各国の料理本を表彰するグルマン世界料理本大賞HEALTH&NUTRITION部門でグランプリを受賞し、大きな話題に。大竹さんが発信している「発酵×薬膳」の魅力について話を伺いました。

腸内環境を整える発酵食品との出会い。

神奈川県平塚市で蕎麦店を営む傍ら、薬膳料理、薬膳茶、発酵食にまつわる講座を開催し、発酵×薬膳の啓蒙活動を行っている大竹宗久さん。もともと大竹さんが発酵や薬膳に興味を持ったきっかけは、子どもの食物アレルギーでした。

『そば処 名古屋』の2代目店主として店を切り盛りしている大竹宗久さん。

「大豆、小麦、卵、鶏肉、牛乳など、ひどい食物アレルギーで。大豆や小麦がダメなので、醤油や味噌も使えません。食べられるものが少なく、野菜に塩をかけるという食生活。料理人の端くれとして、何かいい方法はないのだろうかと食の研究を始めたんです」

そんな時に知人から「味噌は大豆を使わなくてもつくれる」と聞いた大竹さん。大豆の代わりにひよこ豆で味噌を、大豆と小麦の代わりにひよこ豆と玄米で醤油をつくってみたところ、大成功。その後、食物アレルギーの文献を調べていくうちに、たどりついたのが腸内環境を整えることの重要性でした。

大豆の代わりに、ゆでたじゃがいもでつくったポテト味噌。

「腸内環境を整えることで体質を改善したいと思い、甘酒を飲んだり、塩を塩麹に変えたり、発酵食品を取り入れた生活を始めたんです。すると子どもの体調が良くなって、症状もほとんど出なくなった。食べるものでこんなに変わるんだと実感したんです」

店で出している黒麹甘酒、黒米甘酒、季節限定のみかんの甘酒。

食べるものが薬となり、
健やかな体へ導く薬膳。

食材や食材の効能に興味を持った大竹さんは、薬膳を学ぶ専門学校に入学し、国際薬膳師の資格を取得。その後、種子島で参加した発酵料理の教室をきっかけに、麹の旨みを再認識。発酵と薬膳を組み合わせることを思いついたそう。

薬膳とは、世界三大伝統医学のひとつである中医学をベースにした、心と体を整えるための食事のこと。難しいイメージを抱きがちですが、気軽に取り入れられるものだと大竹さんは言います。

「食べたものが薬になって、体ができるというのが薬膳の基本の考え方。喉が痛いかられんこんを食べよう、便秘が気になるからごぼうの煮物をつくろうとか、毎日のごはんをちょっと変えるだけで薬膳といえます。薬膳茶も気軽に取り入れられて、効果が出やすいのでおすすめです。僕は爪が割れやすいのと白髪が気になっているので、黒豆や黒ごまなどの黒い色のお茶を水代わりに飲んでいます」

冷えや肩こりにいい生姜、眼精疲労にいい黒クコ、疲労回復に効くナツメなど、様々な効能がある薬膳茶。

旬の食材を味わうことも薬膳の基本のひとつ。季節に合わせて食材の色を意識して選ぶだけでも薬膳を取り入れた健やかな食生活に。

「春は山菜や小松菜などの緑のもの。梅雨の時期はかぼちゃやとうもろこしなどの黄色いもの。夏はトマトやスイカなどの赤いもの。秋は大根や白米などの白いもの。冬は海藻や黒ごまなどの黒いもの。難しく考えすぎず、ぜひ色だけでも覚えて取り入れてほしいです」

店の片隅に自家製の醤油やコンブチャ、薬膳の素材が並ぶ。

簡単だから続けやすい
「発酵×薬膳」レシピ。

旬の食材や体調に合わせて食材を選ぶ薬膳の考え方に、発酵調味料を組み合わせるのが大竹さんのすすめる「発酵×薬膳」。毎日、発酵食品を食べることは難しくても、調味料を発酵調味料に変えるだけなら手軽です。

「普段使っている塩を塩麹に、砂糖を甘麹に変えて、毎日の料理をつくろうというのがコンセプト。発酵調味料は簡単につくれますが、市販のものでも構いません。例えば、生理痛がひどい時なら血をつくるほうれん草を炒めて、醤油麹で味付けする。醤油麹は旨みが強く、味が決まりやすい。他の調味料を加える必要がないので時短になり、薬膳的に体にもいいし、発酵調味料によって腸活にもつながるんです。家族もお通じがよくなり、肌もきれいになったと喜んでいます」

昨年仕込んだ自家製醤油。大豆は酒のつまみにもなる。

他にも日常に取り入れやすいのが、塩麹を使ったドレッシング。塩麹、レモン、コショウを混ぜるだけで出来上がり。米麹のとろみがあるため、油も必要ありません。

「我が家では塩麹、レモン、コショウと一緒にニンジン、玉ねぎをミキサーにかけて、ニンジンドレッシングをよくつくります。そして野菜は季節によって変える。冬は血をつくってくれるニンジン、夏は体の熱を冷ますセロリにすることが多いです」

自家製の米麹。味噌は金沢の無農薬大豆を使って仕込んだもの。

「発酵×薬膳」の発信や
食育にも力を注ぐ。

グルマン世界料理本大賞2023のグランプリを受賞した著書『発酵×薬膳 心と体をスッキリ整える楽チンレシピ』、最新作『症状別 発酵×薬膳 心と体が喜ぶ! ラクうまレシピ』に続いて、現在は次の著書も執筆中。

日本だけでなく、海外でも薬膳料理や発酵食講座を開催するなど、発酵×薬膳の発信に力を注いでいる大竹さんですが、多忙な日々でもやりたいことが尽きないそう。

「いつか薬膳と薬膳茶の小さなお店を開きたいし、子どもに向けた食育にも取り組みたいですね。店で味噌づくりや醤油づくりのレッスンを行っているのですが、小学校でも味噌づくりをやってみたい。一緒に味噌を仕込んで、出来上がったら味噌汁をつくって食べる。食べるものを自分で選ぶ力がついたらいいなと思っています」

大竹さんの著書。発酵調味料のつくり方や手軽につくれるレシピを紹介。

大竹 宗久(おおたけ むねひさ)さん

大竹 宗久(おおたけ むねひさ)さん

大竹 宗久(おおたけ むねひさ)さん

国際薬膳師、中医薬膳師。SNSで立ち上げたグループ「体が喜ぶ食材と薬膳生活。」は1万人以上が登録。麹を使った料理、味噌や麹づくり、薬膳茶などの講座をオンラインやカルチャーセンターなどで行う。著書に『発酵×薬膳 心と体をスッキリ整える楽チンレシピ』『症状別 発酵×薬膳 心と体が喜ぶ! ラクうまレシピ』(三笠書房)。
https://otakeyakuzen.com/

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