手仕事カレンダー

Vol.14 一つ星フレンチ「アムール」後藤祐輔シェフ直伝!さわやかな春の味「発酵キャベツ」

2025/03/27

Vol.14 一つ星フレンチ「アムール」後藤祐輔シェフ直伝!さわやかな春の味「発酵キャベツ」
Vol.14 一つ星フレンチ「アムール」後藤祐輔シェフ直伝!さわやかな春の味「発酵キャベツ」

「みずみずしくてやわらかな春野菜は、発酵させやすく、おいしくなるものが多いです。春は気温的にも、発酵に適していますよね」。そう話すのは、あの「ミシュランガイド東京」で7年連続一つ星に輝いている、東京・恵比寿のフレンチの名店「アムール (Amour)」総料理長、後藤祐輔シェフ。

店で提供している、乳酸菌たっぷりな「発酵キャベツ」のレシピを、家庭向けの作り方で教えてくれました。また、“体が資本”のシェフ。健康を下支えする、「納豆とヨーグルト」の話も必読です。

世界のレストランでは「発酵」がスタンダードに!

後藤シェフが店で発酵野菜を振る舞うようになったのは、6年ほど前から。大きなきっかけとなったのは、世界中にその名を轟かせている、デンマークの有名レストラン「noma(ノーマ)」の存在です。

「世界のベストレストラン50」で5度も世界一になったノーマは、店内に設けた発酵ラボで独自に研究・開発した発酵食品をすべての料理に取り入れている、世界の発酵ブームを牽引する店。

「当時、フランスでも日本でもノーマの影響を受け、フレンチに発酵食品を取り入れる店が増えました。あれから時が経ちましたが、“発酵”は単なる流行ではなく、すっかり定番になっています。『アムール』でも、玉ねぎやトマト、マッシュルームなど、さまざまな野菜を乳酸発酵させて、そのときどきで提供しています」

「塩分控えめでフレッシュな味わい」がアムール流の発酵キャベツ

「アムール」で提供する発酵野菜の中でも「家庭で作りやすい」とすすめてくれたのが、「発酵キャベツ」。ドイツの「ザワークラウト」、フランスの「シュークルート」など、キャベツを乳酸発酵させるレシピはさまざまありますが、後藤シェフが大切にしているのは、フレッシュ感です。

「キャベツ重量の0.8%の塩分で漬けています。このぐらいの塩けがほどよく爽やかでやさしい味に仕上がるので、フレンチとの相性もいいんです。塩分1%なら塩辛さを感じるほどですし、塩分の濃度が上がるにつれ、“漬物感”が強くなってしまいます」。

店では、仕上がったすぐのものを提供しているそう。「塩分が少ない分、長く日持ちはしません。でき上がりから2日間以内では食べていただきたいです」

「アムール」で提供している「発酵キャベツ」は、専用機で真空状態にして発酵させている。
色が黄色く変わり、袋がぷくっとふくれてきたら、でき上がりの証拠。

「発酵キャベツ」のレシピ

  • [材料](作りやすい分量)
    キャベツ1/4個(350g)
    2.8g(キャベツ重量の0.8%)

発酵後、すぐ食べきれるように、キャベツ1/4個程度の分量がおすすめ。
「普通のキャベツで十分においしいですが、春キャベツを使えばさらにやわらかさが楽しめますよ」

  • [作り方]

    1. キャベツは、せん切りより太めの細切りにする。

    「せん切りのように細く切り過ぎると、発酵段階でぐずぐずに崩れやすくなります」

    2. ボウルに①を入れ、塩を加えて手でまぜ、全体によくまぶす。

    手でギュッともみ込まず、塩であえるような感覚でふわっと全体に行き渡らせる。

    3. ジッパーつきの保存袋に入れ、袋中の空気をできるだけしっかり抜き、口を閉める。

    発酵時に袋内がふくらむので、保存袋はキャベツの分量よりもやや大きめのものを使用。
    袋に入れ(上左)、一度袋内の空気を押し出してジッパーを半分閉め(上右)、再度空気を抜いて(下左)、
    ジッパーをすべて閉じると(下右)、空気をしっかり抜くことができる。

    4. 20℃ぐらいの室温で常温保存し、5日ほど(夏場は3日ほど)経って、キャベツが黄色に変わり、袋がふくらんだらでき上がり。さらに保存する場合は、別の保存袋や保存容器に移し、冷蔵室で保存し2日以内に食べきる。

    発酵が進まないように、でき上がりの発酵キャベツは別の袋や容器に移して冷蔵室で保存する。

「発酵キャベツ」のおいしい食べ方

穏やかな塩けと爽やかさで、そのまま食べても箸が止まらないおいしさの「発酵キャベツ」。店でどのようにして振る舞っているのでしょうか?

「水けをしっかり絞ってから、オリーブオイルであえます。こうすることで、さらに口当たりがやさしくなります」

「特に、魚料理のつけ合わせにすると、『発酵キャベツ』のよさが生かせます。
フレッシュでやさしい酸味が、繊細な魚料理の風味を邪魔せずにおいしくしてくれる、よいワンポイントになるんですよ」

この日のひと皿は、鰆だけでなく、キャベツも主役に。「発酵キャベツ」をハーブで飾り、芽キャベツのフリットで香ばしさも添えて、さまざまなキャベツのおいしさが楽しめます。「発酵キャベツ」のフレッシュな風味を途中に味わうことで、鰆のポワレのおいしさも引き立ちます。

春の一品、「鰆のポワレ ブールブランソース 発酵キャベツと芽キャベツのフリットを添えて」。
繊細な彩りとさわやかな味わいが楽しめる。ブールブランソースは、魚との相性も抜群の、バターのソース。

“体が資本”のシェフ業を支える、「納豆&ヨーグルト」の習慣

お客様に提供する前の味見やメニューの試作など、仕事中に食べることが多く、お酒もよく嗜むという、後藤シェフ。体調管理やエネルギーの摂取量、栄養バランスについてなど、健康面には人一倍気を使うそうです。

多忙な毎日のなかで元気を保つ秘訣とは? 「それはほぼ毎日、同じタイミング、食べ方で納豆とヨーグルトを食べることです」

後藤シェフが食べ続けているのが、「おかめ納豆S-903」(右)と、
大手スーパー「ライフ」のプライベートブランド「スマイルライフ」の「北海道プレーンヨーグルト脂肪ゼロ」(左)。

食べるタイミングは、仕事終わりの深夜12時。
「まず納豆を食べ、大好きなお酒とちょっとしたおつまみを楽しんだら、最後、低脂肪ヨーグルトでしめます。この習慣で風邪をほとんどひかなくなりました。さらに胃の調子もよくて。胃の調子が悪いと、味見してもおいしく感じなくなってしまいますから、料理人にとっては致命的です。改めて発酵食品を食べることのよさや大切さを感じています」。

納豆は1パック、付属のたれを加えてよくまぜ、そのままでパクリ。
「納豆菌に加えて、たれで乳酸菌もとることができます」

「同じ発酵菌をとり続けること」を心がけて

「食べている納豆とヨーグルトは、ストックがきれたら深夜のスーパーでも手に入るぐらい、気軽なもの。むしろ、これと決めたら同じ種類を食べ続けることにこだわりがあります」と後藤シェフ。そのほか、仕事前に週34回ほどジムに通い、昼は完全栄養食とも言われるゆで卵を食べることも習慣化しているそうです。

「同じ発酵菌を与え続けて、体の中に常駐させているような感覚と言ったらいいんでしょうか。私にとって納豆とヨーグルトは、体調を支えてくれる“薬”のような存在ですね」

ヨーグルトはたっぷりと1/2パック(約200g)にはちみつをかけて。
「甘いものが好きですが、意識的に控えるようにしていまして……。一日の最後ぐらいは甘いものでしめています」

後藤祐輔(ごとうゆうすけ)さん

「アムール」エグゼクティブシェフ

後藤祐輔(ごとうゆうすけ)さん

「アムール」エグゼクティブシェフ

後藤祐輔(ごとうゆうすけ)さん

『ミシュランガイド東京・横浜・湘南2013』以降、7年連続で一つ星を獲得した、東京・恵比寿のフレンチレストラン「アムール」のエグゼクティブシェフ。辻調グループ・フランス料理専門カレッジに入学後、辻調グループ・フランス校に進学。卒業後、ストラスブール「オ・クロコディル」(当時3つ星)にて腕を磨く。帰国後、銀座「レカン」にて修行後、再度渡仏し、数々の星つきレストランでの修行を経て、2012年「アムール」を開店。家庭的な料理の提案も行っており、明るく親しみやすい人柄でテレビに多数出演し、YouTubeチャンネル「ごとちゃんねる」でも活躍中。著書に『一つ星フレンチ「アムール」が教える ふだん着フレンチ』(主婦の友社)。
「アムール」https://www.amourtokyojapan.com/

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