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手仕事カレンダー
Vol.15こいけかおるさんの
「豆乳甘糀」で作る
「発酵生クリーム」は濃厚なのに後味軽やかで、
春の気分にぴったり!
2025/04/24
手仕事カレンダー
2025/04/24
米糀の力を生かした「発酵生クリーム」は体にやさしく、リッチなのに後味がさわやかでバランスのよい味わい。作りおきもできるという、すぐれものです。
「豆乳甘糀」をベースとした「発酵生クリーム」を考案し、「グルマン世界料理本大賞」の2023年発酵部門でグランプリを受賞した発酵・食養料理家のこいけかおるさんに、その魅力や作り方を教えてもらいます。発酵食品を使った料理を多く提案する、こいけさんの料理教室についても話を聞きました。
交通事故で大けがをしたことをきっかけにマクロビオティックを学び、発酵食品や玄米食を取り入れながら、手軽に続けやすい独自の食養生で体を整える提案をしている、こいけさん。著書の『麹の発酵クリームと発酵おやつ』では、体にやさしく、見た目もわくわくするようなスイーツレシピを披露しています。
「お菓子作りが得意な母の影響で、私もお菓子を作るのが好きです。今ではすっかり大きくなった5人の子どもたちにも、おやつをよく作りました。料理で発酵食品のよさを知るうちに、やさしい甘み、健康や美容に良いとされる糀の効果を、スイーツにも生かしたいと考えました」
こいけさんが目指すのは、アレルギーを持つ人もそうでない人も、みんなが楽しく食べられる、罪悪感のないスイーツ。「このクリームは動物性の食材を使わず、米糀で自然な甘みを引き出しています。また、美肌を整えるといわれる豆乳の大豆イソフラボンを吸収しやすい形でとることができます。ヴィーガンの方、アレルギーに悩む方、ダイエットをしたい方など、いろいろな方々にもっとスイーツを楽しんでいただけたら」
「発酵生クリーム」の味わいで驚くのは、まるで動物性油脂の生クリームのような濃厚なコク。そのコクと旨みの素となるのが、「豆乳甘糀」です。
「麹菌が作り出す酵素の働きによって、米や豆乳に含まれるでんぷんはブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸へと分解されます。この過程で甘みや旨み、さらにミルキーな味わいが生まれます。また、栄養素が分解されることで消化吸収しやすくなり、体にもやさしいのです」
発酵生クリーム作りに活用するのはもちろん、そのままでもぜひ味わってほしい、とこいけさん。「豆乳で割ったり、レモンやココアパウダーを加えたり、コーンフレークやヨーグルトにかけてもおいしいですよ」
「豆乳甘糀」にこいけさんがよく使うのは、このふたつ。
「イオンの『オーガニック成分無調整豆乳』はさらっとした質感がちょうどよく、南日味噌醤油の『生手造りこうじ』は、旨みや甘みが濃く、ミルキーな味わいに仕上がるのがいいですね」
でき上がり分量は約900g。乾燥糀で作る場合は、米糀の分量を270gにする。
1.鍋に豆乳を入れ、弱火にかける。60度になったら火を止め、米糀を加える。
泡が少しふつふつと立ってきたら、豆乳が60度前後になったという目安。火を止めて、すぐに米糀を入れる。
2.ジッパー式の耐熱保存袋に①を入れる。
袋を保存容器などにかぶせておくと、中に入れやすくなる。
3.タオルで②の袋全体をくるみ、炊飯器の中に入れ、ふたを開けたまま保温モードにして60度前後に保ちながら6〜8時間おく。途中、取り出して袋の上から2〜3回もむようにして混ぜる。
炊飯器に入れるときは、保存袋が炊飯器の底に直接当たらないようにしっかりとタオルでくるむ。
温度が上がり過ぎないように、ふたは開けっ放しに。
「保温の初めに、温度計で60度ぐらいになっているか確認しましょう」
※ヨーグルトメーカーや低温調理機で作る場合は、60度で6〜8時間保温し、途中2〜3度かき混ぜる。
4.③を鍋にあけ、ひと煮立ちしたら火を止める。あら熱をとり、清潔な保存容器に入れる。冷蔵室で1〜2週間保存可能。
発酵が進むと酸味が出てしまうので、必ず火入れを。乳酸菌や他の雑菌を殺菌し、
酵素の働きを止めるのがポイント。冷蔵室で1〜2週間、冷凍なら1ヶ月ほど保存可能。
「絹ごし豆腐は、分割タイプだと水切りが早く、しっかりできます。
ココナッツオイルはココナッツの香りがしない、無香タイプのものがおすすめ。
香りづけには、人工香料を含まない、バニラエクストラクトを使います」
豆腐はキッチンペーパーに包んで重しをのせ、冷蔵室で一晩おいて190〜210gになるように水きりする。
「1ℓの紙パック豆乳2本分を重しにして一晩おき、190〜210gまで水がきれない場合は、
より重めの重しをのせて分量まで水きりをします」。
水を受け止めるバットにキッチンペーパーで包んだ豆腐を入れた保存容器を入れ、
ひと回り小さめの空容器をのせて(左)、紙パックを重ねる(右)。
190〜210g程度に水きりした豆腐。しっかりと水きりしないと、クリームがゆるくなるので、注意。
1.ボウルに豆腐、Aを入れ、40〜50度で湯煎にかけながらハンドブレンダーで撹拌する。
ココナッツオイルは20度以下になると固まる性質があるため、湯煎にかけながら混ぜるとなめらかに(右)。
2.乳化してツヤが出たら、バニラエクストラクトを加えてよく混ぜる。
さらに1日おいて冷やすと、味がなじんで、しっかりと角が立つ。冷蔵で2〜3日、冷凍で1ヶ月ほど保存可能。
「お菓子作りのデコレーションにはもちろん、季節のフルーツに添えるだけで満足感のあるデザートになります」とこいけさん。さらに、簡単に作れるアレンジ法を教えてくれました。
「この『発酵生クリーム』はそのまま凍らせるとアイスクリームにもなります。クッキーで挟んで冷凍庫で冷やし固めれば、アイスサンドクッキーができ上がり、かわいくておもてなしにもおすすめです。発酵生クリームに抹茶やココアパウダー、ラズベリーなどを混ぜれば、お好みのフレーバーに仕上がって楽しいですよ」
「発酵生クリーム」を絞り袋に入れて市販のビスケットに絞り出し、もう1枚のビスケットで挟んで、
ラップで包んで冷凍室で2時間以上冷やし固める。
「発酵生クリーム」100gに対し、抹茶は小さじ1.5、ココアパウダーは小さじ2を目安に。
自分でさまざまな発酵食品を手作りしている、こいけさん。調味料としてよく活用するトマト糀やレモン糀などの変わり糀もそのひとつです。しかし意外にも、自身の料理教室やレシピ製作のときに使っているのは、市販の塩糀やしょうゆ糀だといいます。
「各家庭で作る塩糀やしょうゆ糀は、使用する糀や塩、しょうゆによって味わいがまったく異なります。一つのレシピを誰が作っても同じ味に仕上がるようにするためには、市販のものが欠かせません。マルコメの『プラス糀 生塩糀』や『プラス糀 生しょうゆ糀』はクセがなく、和洋中どんなお料理にもなじみ、うま味調味料を使うことなく、それだけで味が決まるので、レシピ製作などで大活躍しています。発酵食品を気軽に料理に取り入れたいなら、市販品はおすすめです」
「塩糀は、野菜にまぶすだけでも十分においしいのです」。
このとき作ってくれたのは、ピーラーで削った大根を塩でもんでしぼり、
ディル、レモン糀、市販の塩糀、オリーブオイルで和えたマリネ。
発酵・食養料理家
発酵・食養料理家
食養料理教室「天使の台所」を主宰。食養生をベースに発酵を取り入れた独自のメソッドで、「心と身体を癒す」レシピを提案。料理教室サイト「My Kitchen」の顧問も務める。著書『麹の発酵クリームと発酵おやつ 乳製品、卵を使わないグルテンフリーレシピ』(旭屋出版)は、「グルマン世界料理本大賞」の2023年発酵部門でグランプリを受賞。