高血圧を防止するため、現在では世界的に塩分の摂取基準が段階的に引き下げられています。中でも日本人は、他国に比べて塩分を多く摂取していると考えられており、1日の摂取基準は、アメリカでは、1日3.8〜5.8gであるのに対し、日本では、男性1日8g、女性は1日7gとされています。
国別の塩分摂取量
塩分そのものの摂取量が多い中国の人々に比べ、日本人の塩分の摂取源は、醤油や味噌だと言われてきました。そのため、血圧を気遣う人々のなかには、みそ汁など、味噌を用いた食品を制約しなくてはいけないのではないかという考えがありました。
※品物・製品・調理方法によりある程度の差があります。
しかし、野菜や具材の栄養も摂りやすいみそ汁の塩分は、1杯で1.5gと決して多くありません。本当に味噌は血圧を上げるのでしょうか?この疑問に答えを出すため、マルコメは、味噌の成分を分析しました。その結果、血圧を下げるペプチドが検出されることがわかり、新規の成分も含まれていることが示唆されました。
動物試験 血圧が自然に上がるラットで比較
食塩水と比較し、味噌で血圧上昇を抑制
次に、共立女子大学の協力を得て行った、血圧が自然にあがるラットで試験を実施した結果では、味噌摂取では同じ食塩量を含む食塩水摂取と比べて、血圧上昇を抑制することがわかりました。
第39回 日本高血圧学会総会 (2016年10月1日)
内川実紗、日比野真帆、平林里美、山崎亜貴、山川称子、上原誉志夫、小池祥悟、北川学、山本哲郎
ヒト試験 初めての長期摂取試験
みそ汁の長期摂取により、血圧は上がりませんでした
その後、16gの味噌を用いたみそ汁を1日2杯ずつ、3カ月飲んでもらう「長期ヒト介入試験」を実施。その結果、一般的なだし入り味噌では血圧を上昇させることはありませんでした。つまり、「1日32gまでの味噌摂取は、血圧を上げることはない」という結論を導き出すことができたのです。
更に、味噌の血圧低下効果を検証するため、疑似味噌または味噌をみそ汁として1日2杯ずつ、2ヶ月飲んでもらう試験を実施。疑似味噌は、食塩を使用せず、未発酵の大豆粉末と米粉で作りました。味噌は、一般的な味噌と新規開発味噌の合わせ味噌です。
結果は、味噌には塩分が含まれているにも関わらず、疑似味噌群と味噌群の日中血圧に差がなく、味噌群では夜間血圧が低下しました。つまり、「味噌摂取は、日中血圧には影響せず、夜間血圧を下げる効果がある」ということが分かったのです。
※夜間血圧とは:通常、就寝中の血圧は下がるが、高いままの場合、脳卒中などのリスクが高いと言われている
ヒト試験 味噌摂取による血圧低下効果の検証
※以下出典より図を改変して掲載
味噌には食塩が含まれているにも関わらず、
日中血圧は上がりませんでした
※以下出典より図を改変して掲載
味噌群での摂取前と2ヶ月の比較 #P <0.05
2ヶ月の疑似味噌群と味噌群との比較 †P <0.05
味噌摂取により、夜間血圧が下がりました
今後マルコメでは、こうした実験結果を多くの人にお伝えすることで、高血圧など健康を気遣う人にもみそ汁を楽しんでもらう一助になればと考えています。
同時に、引き続き味噌についての研究を進めることで、その働き・効果などを科学的に究明することに努めていきます。
※掲載の内容は2020年3月現在のものです。