発酵食品は、世界各地に存在していますが、その気候風土から必然的に生まれたものではなく、言わば偶然の産物と考えられています。
最も古い発酵食品であるチーズの歴史は、約4000年以上前にさかのぼります。砂漠を行く商人がラクダの背中にくくりつけた羊の胃袋で作った水筒の乳を飲もうとしたところ、乳が固まっていて、食べたら美味しかったのがチーズの始まりと言われています(図1a)。
パンも、メソポタミア地方で最初は、無発酵パンが食べられていました。あるとき捏ねて焼き忘れていた生地を焼いたところ、酵母による発酵により、ふっくらとした美味しいパンになっていたのが、発酵パンの始まりと考えられています(図1b)。
そして日本の代表的な発酵食品である味噌、醤油はそのルーツは醤(ひしお)とされています。醤とは食塩を混ぜた保存食で、もろきゅうのもろみのようなものと考えられていて、原始時代の狩猟民族によって、最初に肉と食塩を混ぜた肉醤(ししびしお)が中国で発明されました。その後、草と食塩を混ぜた草醤(くさびしお)、魚と食塩を混ぜた魚醤(うおびしお)、そして農耕を始めるようになって穀醤(こくびしお)、鼓(し)が生まれています。その穀醤の製造方法が、仏教の伝来と共に日本に伝えられたと言われています。
その後、日本にやって来た醤から未醤(みしょう)が生まれ、そして味噌になったとされています。この味噌の桶に溜まった溜りが、室町時代に独立した液体調味料である醤油になったようです。
このように先人たちの発見によって現代の豊かな食生活の基礎が形作られました。
図1. 発酵食品のルーツ(a.チーズのはじまり)
図1. 発酵食品のルーツ(b.発酵パンのはじまり)