『FD(フリーズドライ) つきぢ田村シリーズ』は、繊細な味わい、豊かな風味、食べごたえのある具材の食感などを有した人気の製品です。つきぢ田村のこだわりの味、おいしさを実現することができたのは、フリーズドライを2ブロックにするという発想でした。
フリーズドライのみそ汁は、通常ひとつのブロックの中に、調味液、具材を盛り込み、凍結乾燥させるのが一般的です。しかしこの製法の場合、具材に調味液が移行しやすく、「具材が塩辛い」「具材本来の味がしない」「湯戻し時の復元性が損なわれる」という課題を抱えていました。「1ブロックの場合、問題が生じる原因は味噌に含まれる塩分でした。しかし、味噌中の塩分を減らすと味が薄くなってしまいます。味噌のおいしさを保ったまま、具材のおいしさを引き出すにはどうしたらいいか。そう考えたときに、思いついたのが、味の濃いブロックと、薄いブロックの2つのブロックをセットにするというアイデアでした。そうすることで、味の影響を受けやすい具材を塩分から守りつつ、おいしいみそ汁をつくることができます」
味の影響を受けやすい食材の代表として、豆腐が挙げられます。
「単体では淡白な味わいの豆腐は味が染みやすく、フリーズドライにした際に塩辛くなりやすい傾向があります。また、素材そのもの味を楽しみたい食材にも2ブロックは最適なアイデアだと考えました」
開発部 商品開発課 武田昌彦
2ブロックの利点は、それだけではありませんでした。具材に下味をつけられる点も『FDつきぢ田村シリーズ』のようなこだわり製品にはぴったりでした。
「ブロックを2つにすることで、食材に適した味をつけることが可能になったのです。たとえば、味をつけていない乾燥させただけの具材ブロックと、味噌ブロックをセットにしたとしましょう。そうすると、具材はただ湯戻ししただけのものになってしまいます。程よい加減の味を具材のブロックに入れることで、私たちが目標としている『鍋でつくったみそ汁のような仕上がり』を実現することができるのです」
さらに、味のバリエーションが付けやすくなったことも2ブロックの利点であると武田さん。
「たとえば白身魚で繊細な味わいの『FD つきぢ田村 鯛汁』の場合、鯛の旨味を味わえる味付けになっています。具材ごとに味噌の配合も変え、それぞれのおいしさを引き出すことにも成功しました」
しかし、2ブロックの開発には課題もありました。
「2ブロックの場合、具材が入るスペースが1ブロックに比べて小さくなってしまいます。小さなブロックに具材を押し込まなくてはならないこと、また、ブロックが割れないよう成型しなくてはならないなど、製造上の問題が発生しました。一方で、監修してくださったつきぢ田村の田村社長が理想とする、具材の大きさや食感などを絶対に実現するという思いがありましたから、どちらも叶えることができる、大きさや形を、具材ごとに細かく調整しました」
こうした細かな調整があるからこそ、おいしいみそ汁を実現することができたのです。
「製品化までにはさまざまな苦労がありましたが、胸を張って皆様におすすめできる製品になったなという実感があります。また、技術とおいしさがしっかりとリンクした製品であると自負しています。お客様からの反響も大きく、開発担当者にとってこれほどの励みはありません」
武田さんは、今後もフリーズドライ製品を探求していきたいと語ります。
※フリーズドライ2ブロックの技術は特許取得しています。(特許第5761795号)
※掲載の内容は2016年12月現在のものです。