マルコメが「ダイズラボ」というブランドを立ち上げたのが2015年のこと。大豆をもっと手軽においしくという思いからでした。
「味噌メーカーとして大豆は大切な主原料であり、ずっと向き合ってきた素材です。ダイズラボが立ち上がるなか、糖質が少なく、食物繊維やタンパク質が豊富な健康食材である大豆を丸ごと食することができる大豆粉として打ち出してはどうだろうというアイデアが持ち上がりました」
と話すのは、『ダイズラボ 大豆粉』の研究に携わった小林さん。大豆粉を小麦粉の代わりとして使ったり、一部置き換えることができたら、糖質を気にする方、グルテンフリー食品を求める方に喜んでもらえるのではと考えたのです。
開発部 商品開発課 小林弘明
しかし、『大豆粉』を製品化するまでには、たくさんの試行錯誤があったといいます。
「大豆の粉というと一般的にきな粉がよく知られています。大豆にはリポキシゲナーゼという酵素が含まれており、この酵素の働きから、生のままでは生臭く、エグみがあります。一方、加熱しすぎると酵素は失活しますが、きな粉のような色、味、風味になってしまいます。そこで目指したのは、えぐみ、生臭みを抑えつつ、大豆らしい風味を持った大豆粉でした」
小林さんは、理想の大豆粉を目指して、大豆への熱のかけ方、温度帯、処理の仕方などを徹底的に探求していきました。
「開発を始めて約1年。試行錯誤の後、私たちが考える大豆粉がようやく見えてきたように思いました」
その後も一筋縄ではいかなかったと小林さんは振り返ります。
「ラボではできた大豆粉ですが、そのままの条件では、実際に用いる機械でうまくいかないことがわかったのです。そこで、当社の設備開発担当と何度も相談しながら、実機を使って一から計算しなおし、改めて条件を決めていきました」
そしてようやく完成した『ダイズラボ 大豆粉』は、さまざまな用途で使いやすく多くの人に喜ばれる製品となりました。
さらなる展開として小林さんは、『大豆と米糀のスイーツ粉』の開発に取り掛かります。
「スイーツ粉の場合、スイーツをおいしくふんわり仕上げられる粉にしなくてはなりません。しかし、原料に大豆粉を用いると、水を吸いやすいので、ねっとりと重い食感のものになってしまうのです。そこで、粉の粒の大きさをさらに細かくする処理をすることで、ふわっとした食感、なめらかな舌触りになるよう工夫を凝らしました」
しかし、小麦粉の代わりに用いる粉としては、まだまだふわっと感が足りない。そう考えた小林さんは、さまざまな素材を粉に加えて模索し続けました。
「解決策は、意外に身近なところにありました。マルコメにとって馴染み深い米糀を粉の中に入れてみたところ、生地に風味が増し、おいしいスイーツ粉に仕上がったのです。米糀の持つ甘味や保湿効果のある成分が作用するのではないかという予想がぴたりと当たり、とてもうれしかったですね」
こうして『大豆と米糀のスイーツ粉』は、大豆と米糀という味噌メーカーにとって大切な素材が組み合わさった、マルコメらしいコンセプトの製品となりました。
さらに小林さんの挑戦は続きます。 「『大豆粉』の開発はまだ始まったばかり。今後ますます使いやすい製品を目指して開発を進めると同時に、幅広く使い方の提案をしていきたいと思います」
※掲載の内容は2016年12月現在のものです。